癒される心と体 -元気回復堂-

【旧】患者さんに寄り添う理由

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なぜ私が「患者さんに寄り添う」を使命としてあげているのかをお話します。

私が喜びを感じるのは、施術を施した患者さんから「今までより歩けるようになった」「朝起きるときの痛みがなくなった」とご報告をいただくときです。

施術後、顔つきが変わり、少し楽になった、気持ちよかったと言われるのも嬉しいことですが、施術後数日から一週間たった時、この様に言われるのが一番嬉しいのです。

そのためには患者さんにしっかりと寄り添うことが大切だと思っています。

そして何よりも、患者さんの痛みを改善し「歩ける、出来る、痛くない」が大切だと思い、「患者さんに寄り添う」を使命として掲げることを決めました。

ではなぜ「患者さんに寄り添う」を掲げようと思ったのか?その理由を聞いてください。

◎プレッシャーとの闘い。

私自身の慢性腰痛を克服した経験をもとに、痛みに悩む人の役に立てればと自宅の一室を改装し平成14年6月に治療院を開業したのですが、それ以前は7年間自動車のセールスをしていました。

「営業の仕事は売ったら売った分だけ給料が増える」というやりがいのある部分もありますが売れない時は悲惨です。

自分がどんなに一生懸命にやっても売れなければ給与はスズメの涙。

休日返上で働いても給与には何も反映されません。

こんな経験をした私はいつしか「仕事は実績がすべて」という考えを自然と持つようになりました。

そして治療院を開業してからも「仕事は実績がすべて」は変わりませんでした。

「患者さんの痛みを改善するのが自分の仕事」「痛みを改善出来ないのなら自分の存在価値なし」という思いで日々施術にはげんでいました。

なかなか痛みが改善しない患者さんがいると、治療費を受け取らなかったことも何度かありました。

そのかいあって全く目立たない住宅街で開業したにもかかわらず、治療院の業績は開業当初から順調に推移していました。

しかし一方では「痛みを必ず改善しなければならないというプレッシャー」で押しつぶされそうな毎日で、仕事が終わるとクタクタに疲れ果てていました。

◎それは、患者さんからのある一言がきっかけでした。

そんなある日、大変ショッキングな一言を患者さんからいただきました。

その方は林さんという70代後半の男性の患者さんです。

林さんは100メートルぐらい歩くと右側の腰が痛くなるということで当院に来院されましたが、施術を重ねるごとに順調に回復していました。

林さんもとても喜んでいて、だんだん顔つきや表情も明るくなっていくのがわかりました。

が、、、

5回目に来院されたとき、そこには明るい表情など微塵もなかったのです。

そしてがっかりしたような口調で一言「やっぱり、治らないんですね。」と。

正直驚きました。

「だいぶ良くなってきたとあんなに喜んでいた林さんが何故?」

詳しく聞いてみると、「だいぶ調子が良くなったので少し歩いてみよう思い、自宅から3㎞ほど離れたバス停まで歩いたら以前と同じ痛みが出た」とのこと。

これを聞いた瞬間、怒りがこみ上げてきました。

「痛みを必ず改善しなければならないというプレッシャーに耐えながら一生懸命に施術して、せっかくいい方向に向かっていたのに、無理をして今までやってきたことを台無しするなんて許せない、何ってことをしてくれたんだ」

先ほどの「やっぱり、治らないんですね。」という林さんの問いかけにたいして、ムッとしながら出した私の答えは、

「ちょっと難しいかもしれませんね」

というもので、なんとも言えない後味の悪さだけが残りました。

このことがあってから林さんの来院はなくなりました。

その後は「おれのやったことは正しかったのだろうか?」と自問自答する日々が続き、罪悪感に圧倒されそうな時もありました。

そんなときは「悪いのは林さんだ」と自分自身に言い聞かせ強引に納得させていました。

それからも林さんのように「少し良くなると無理をして痛みをぶり返す」患者さんは多数いらっしゃいましたが、私の対応は林さんにしたのと全く同じものでした。

林さんの時のような反省もせずに・・・

そうこうしている内に来院する患者さん数が減りはじめました。

一生懸命に仕事をしているのになぜ? 痛みを改善しているのになぜ? どうして自分の施術の良さがわかってもらえないのか?

と自問自答する日々が続く中、売り上げはどんどん落ちていきました。

そしてなぜか、常に頭に浮かぶのは林さんの「やっぱり、治らないんですね。」の一言とその時の暗い表情でした。

とうとう、ピーク時3分の1まで売り上げが落ちました。

それでも相変わらず、結果を出している(痛みを改善している)のにどうして売り上げが落ちるのか?どうしたら自分の施術の良さを理解してもらえるのか?
と問い続けていました。

◎自分の弱さを隠すために強がっていただけ。

そんなある日、突然「なぜ自分は痛みを必ず改善しなければならないと思っているのだろうか?」という疑問がわいてきました。

「営業経験があるからだ」と最初は思っていましたが、深く掘り下げていくと「結果を出さなければだれも相手にしてくれない、見捨てられる」という恐怖心からきていることがわかりました。

「結果を出さないと見捨てられるという恐怖心」に煽られていただけの私は、精神的に全く余裕がなく患者さんの気持ちに寄り添っていこうという考すら浮かばなかったのです。

そして林さんのようなケース対し常に同じ対応を続けたのは、「痛みを必ず改善しなければならないというプレッシャー」から逃れるためであることがわかりました。

「良くなったのは自分の施術のおかげ、治らないのは患者さんの責任」と無意識的に考えていたのです!

とどのつまり自分の弱さを隠すために強がっていただけだったのです。

「なんだ、俺はこんな小さな人間だったのか」

こう気づいた時、体中の力が抜けていくのを感じました。そして笑いがこみ上げてきました。

「あーバカだ。バカだな俺は」

そんなことを思っていたら、あの時の林さんの顔が浮かんできました。

「あ~申し訳なかったな」「なんて冷たい態度をとってしまったのだろう」と猛烈に反省しました。

そして次から次へと私がこれまで冷たくあしらった患者さん達の顔が浮かんでは消えていき、いつの間にか私の眼には涙が溢れていました。

この時私は決めました。

何があっても患者さんに寄り添っていくことを。

自分のやり方や考え方ひとまず横に置いてでも寄り添うことを。

◎プレッシャーからの解放

このことがあってから「痛みを必ず改善しなければならないというプレッシャー」はなくなり、施術を一生懸命にやるのは変わりませんが、「患者さんの役にたてたらいいな」というより軽い気持ちで仕事ができるようになり、仕事が楽しく感じられるようになりました。

以前は仕事が終わるとクタクタにヘタっていましたが、今では心地よい疲れを感じるだけです。

売り上げも何もしないのに自然と上がってきました。おかげさまで今年自宅の一室から抜け出し、妻と共に三島に店を出すことができました。

患者さんに寄り添っていると患者さんと気持ちのつながりができ、患者者さんが今、抱えている家庭や職場の問題などを何も聞かなくても自然に話すようになり、施術にも生かすことが出来るようになりました。

患者さんと心がつながると安心感を覚えると共に、心のつながりが出来たという充実感も味わえることに気が付きました。

それだけでありません。患者さんに寄り添っていると本人が何も言わなくても何となく心の状態がわかったりします。

例えば青木さんです。

青木さんは40代後半の男性です。青木さんは3か月以上続く右側の肩甲骨周辺の痛みに悩んで来院されました。

3回目の施術の時、青木さんの痛みはストレスが原因ではないかという考えがふと浮かびました。

そこで青木さんに詳しく聞いてみると「上司とそりが合わないでイライラしていること」「そのイライラは仕事が終わっても続くしつこいものであること」がわかりました。

ストレスを消去する施術後、青木さんの顔つきがガラッと変わりました。今まで半分しかめっ面であまり愛想がなく見えていましたが、なんとも優しい柔和な顔にかわったのです。

「今どんな気分ですか?」と聞くと「しっこかったイライラが消えて、とてもスッキリしました」という喜びの声を聞くことが出来ました。

うれしいです。この仕事をやっていて良かった!本当にそう思います。

もうこの仕事やめられません。死ぬまで続けます。

最後に、今の私があるのは「患者さんに寄り添う」ことの素晴らしさに気付くきっかけを与えてくれた林さんののおかげです。

深く感謝いたします。

林さんありがとうございました。

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